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研究内容Research


弾性可変型模擬舌を用いた食品テクスチャセンシング




 従来,物理測定によって食品のテクスチャ(食感)を評価する手法が開発されているが,剛体プローブや剛体プレートを用いた食品の圧縮・破断操作を利用する手法が一般的である.しかしながら,実際のヒトの舌は柔軟性を有し,食品を咀嚼する際,柔軟物同士の力学的および幾何学的な相互作用を通じて圧縮・破断操作が行われている.このため,剛体のみで構成される機器測定環境と柔軟な舌を用いるヒトの口腔内環境とでは,食品の破断状態(破断片の大きさ,広がり方,など)が大きく異なる恐れがある.したがって,機器測定によるテクスチャ評価結果をヒトの官能評価結果に近づけるためには,直感的に,両者の環境を近づけることが望ましい.
 以上を踏まえ,本研究では,ヒトの舌の弾性変形を考慮した食品テクスチャセンシング手法を構築する.提案手法は,人工咀嚼モデルにおける食品圧縮・破断操作,および圧力分布解析に基づくテクスチャ推定処理から構成される.はじめに,新たに導入する弾性可変型模擬舌の基本原理について示す.模擬舌は,シリコーン弾性体をベースとし,側面・底面の拘束壁,上面のポリウレタン弾性シートから構成される.一つの拘束壁をピストン状に移動させてシリコーン弾性体に予圧縮を与えることで,シリコーン弾性体上面からの押し込み量に対する反力を調整できる仕組みとなっている.ここでは,プロトタイプによる基礎実験を行い,ヒトの舌の弛緩状態から収縮状態までの弾性を再現可能なことを示す.次に,模擬舌を用いたゲル食品の圧縮・破断実験を行い,その過程における一連の圧力分布を計測する.ここでは,模擬舌の弾性に応じて圧力分布が明快に異なることを明らかにする.最後に,圧力分布からテクスチャの官能評価値を推定する実験を行い,テクスチャ評価項目およびゲル食品の種類に応じて,推定精度を向上させるための適切な模擬舌の弾性が存在することを示す.



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Prototype

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Experiment

  • 柴田曉秀, 石原清香, 中尾理美, 池上聡, 中馬誠, 東森充: 弾性可変型模擬舌を用いた食品テクスチャセンシング, 日本ロボット学会誌, vol. 34, no. 9, pp. 631-639, 2016. 日本ロボット学会 学会誌論文賞.
  • A. Shibata, A. Ikegami, S. Nakao, S. Ishihara, M. Nakauma, and M. Higashimori: Food Texture Sensing by Using Imitation Tongue with Variable Elasticity, Proc. of 2016 IEEE/SICE International Symposium on System Integration (SII2016), (Sapporo, Japan, 2016.12.14), pp. 421-427. Best Student Paper Award, Best Paper Award Finalist.
  • TBSテレビ2017年3月5日(TBS)・3月12日(BS-TBS), 「未来の起源」.